ソーラーバッテリー

日本でもっともオフグリッド・車中泊ソーラーバッテリーシステムにたけている技術ノウハウの宝物庫

バッテリーバンク構築に必要な容量の考え方

 
 
■40B19バッテリー
主に軽自動車で使われる小さいバッテリー。それでも8kgの重さがある。これぐらいが女性でもなんとか運べる大きさと重さ。記号の最後にある(RとL)はバッテリー端子の位置を表す。Rだと正面のこの位置から見て右側にプラス端子がくる。Lだとその逆になる。40Bの「B」は写真のバッテリーの端子の「太さ」の規格で、BとDがある。Bは小さいほうで、Dはトラックやバスとかの大型のバッテリーに使われる太い端子で、それによって取り付ける金具のサイズが変わるので注意。
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自動車バッテリーはJISで規格化されている。そのため40B19の場合はバッテリーの容量は公称で29.8Ahぐらい。約30Ah。
ということは、12V×30Ah=360Whの家電が1時間使えるということである。
 
【Whは「1時間当たりの消費電力W」である。
その家電を1時間使うとなくなる電気の量だと思えばいい。
ただ、実際はその半分ぐらいが限界なので360Wの家電なら理論上は30分ほど使える。
 
■バッテリーの容量から使える家電の知り方
家電の消費電力(W)を一回、Ahに直してみる。
 
W=V(ボルト・電圧)×A(アンペア・電流)なので、算数的に
A=W÷V
これを覚えておく。家電の消費電力(W)を使用する電圧(今回は12Vのバッテリーなので12V )で割ると
消費される電流がわかる。すると、バッテリーの容量とみあっているかわかる。
 
180W(1時間180W消費する意味)の電動工具のドライバーの場合
180Wh÷12V=15Ah使う。
 
バッテリーの容量は30Ahだよね?…ということは余裕で使える。
 
■どれだけの時間使えるか知る方法
次に、この電動ドライバーは1時間15A消費するのだから
30Ah÷15Ah=2時間はスイッチオンで使いっぱなしにできる「はず」
 
■ということは?スマホはどれだけ充電できることになるの?
小さい自動車用バッテリーの40B19とはいえ、実はけっこう強いんだ。
 
スマホはUSB5Vで1A~2Aだよね。2Aだと短時間でいいね。
 
5Vで2Aだと5V×2A=10Wが1回の充電で消耗する電力量ね。
 
10Wをバッテリーの12Vで割りなおして、12Vバッテリーでは何Ah分か出す。
 
10Wh÷12V=0.8Ah
電動工具と違ってたったのこれだけだ。ということは、
30Ah÷0.8Ah=37.5回 充電できることになる。
 
今回の教材レベルでも災害時、4人家族のスマホでも1人1日6回も自分のスマホが充電できる。
お友達や、近所の人を助けることができ、きっと命拾いするだろう。
 
■バッテリーの電圧
自動車用バッテリーの電圧は国内と欧州で標準値が微妙に違う。
国内の自動車向けのバッテリーは12.6Vぐらいあれば満充電。13Vぐらいなら「いいね」ベストだ。
欧州車はそれより低い。なので欧州車バッテリーは充電電圧も低くしておく必要がある。
ソーラーをつなぎっぱなしで充電すると12.8V、100%充電の13Vぐらいになっていることもある。
だが、13.6Vあたりで今度はバッテリーのほうが限界にきて「水素が発生」してゴボゴボ言い出と危険なので、コントローラーの限界値を設定し充電電圧が超えないようにしておくことも必要。
 
インバーターが動作するための限界
インバーターを接続して使うと、電圧が一気に0.8~1V近く下がる。
インバーターはバッテリーからの電圧がAC100Vに変換できない限界値に達すると保護回路がはたらいて自動的にアラーム音を鳴らしたりして運転ストップを促す。そのままアラーム音を無視しても使えるが、いずれ保護回路が働いて停止する。
 
アラームが鳴るレベルは、だいたい10.8Vぐらいに設定されている。12.6Vのバッテリーの場合、動作した時点で11.6Vぐらいに落ちる。
そのまま使うと、当然、バッテリーの容量は減るわけだから「電流Ah」が減るわけである。
 
■バッテリーの残量の目安
バッテリーの容量は、電圧で推測する。インバーターをオフにして、テスターでプラス端子とマイナス端子の電圧を測定すればいい。あるいは、コントローラーの表示電圧を見る。
 
 
 残 量  【12V】  【24V】   
92%  12.9 25.8
91%  12.8 25.6
91%  12.7 25.4
90%  12.6 25.2
89%  12.5 25.0
89%  12.4 24.8
88%  12.3 24.6
65%  12.2 24.4
54%  11.9 23.8
39%  11.5 23.0
27%  11.2 22.4
13%  10.8 21.6
   0%  10.5
21.0
 
この表からわかるようにインバーターで使用する場合は、11.8V(54%)ぐらいの容量残までが1つのバッテリーの限界だとわかる。つまり消費されたのは100%-54%=46%分だということになる。
 
つまり30Ahの40B19のバッテリーはインバーターとの実運用では、30Ah×46%=13.8Ahほどしか電流を取り出せない
12V×13.8Ah=165Wぐらいの家電は楽に動くが、それ以上になると動作できない場合も出てくるし。たとえ動いても不安定になったり短時間でバッテリーを使い果たすということになる。
 
■自分のシステムで動く家電の一覧をつくる
各家電が40B19、ディープサイクルで人気があるM27MFでどれだけの時間動くのか
簡単にわかるように作った表である。
家電必要バッテリー数一覧
 
バッテリーの下の数字は「動作させるのに必要な個数」である。
1300Wのハイパワーな家電を動かそうとしたら40B19が8個最低いる。それで20分ほどしか動かない。
でも、1300Wのティファールみたいなポットで3分でお湯をわかすことは十分可能だということになる。
 
■使える家電は「本当の消費電力」で決まる
ここで、運用上のテクニックとしてワットメーターで実際に使う家電の使用中の「本当の消費電力」を把握しておけば、バッテリーの限界値以下で動くものであれば使えるわけである。
 
家電のカタログ値は最高のものを表示しているので、実際にはそこまで使わないことも多い。単純にカタログ値であきらめる前に「本当の消費電力」を知ることである。
 
■単純にその家電が使えないとあきらめない
たとえば、1リットルの電気ポットの消費電力のラベル表示は「900W」でも、実際わかしてワットメーターで測定すると800mlのお湯だと「800W」しか使わなかった。さらにわかす水を半分以下に減らすと、700Wぐらいまで下がっていた。
だから、使用する家電のモードを加減すれば使えないはずの家電も使えたりするので注意してほしい。
 
■今回の教材を拡張して6畳用エアコンを動かせるか?
さて、エアコンだが6畳用2.6kW程度の小さなものは、カタログ値では780Wほど使うので大変かと思うが780W消費するのは最初の起動時数分間であり、それ以後は安定期に入り360W以下に電力消費が抑えられるので(温度が変化したら動くだけ)意外にも長時間使うことができるようになってくる。
当方の実験結果ではM27MF、4台の場合、2.6Kwのパナソニックのエアコンが延べ16時間動作した。
1日8時間としても2日間はエアコン生活ができたのである。旧式のエアコンより近年の省電力型のエアコンは長時間運用が可能である。バッテリーを消耗させないためには極力、省電力家電を選ぶことである。
あなたのシステムが電気ポット900W程度のものが使えるようになっていれば、エアコンは楽に動くということになる。
前述の表で見ると、起動時にはM27MF(満充電でコンディション良好なバッテリーで)1台。40B19は5台必要だが、安定期なら40B19、2台分でも1時間は動くことになる。なのであとは、これを使いたい時間分バッテリーを増設し容量アップをすればいい。そうすれば、ソーラーとバッテリーだけでエアコンを長時間稼働させることができる。
 
 
■消耗したバッテリーの電流を「ソーラー充電で復活させる」
家電使用で容量が減ったバッテリーはソーラーで失われた電流分(Ah)が充電されれば、再び満充電となり家電が使えるようになる。
 
■「電力収支表」はつけるべき
効率的で安いコストでソーラーバッテリーシステムを組もうと思ったら、日ごろコントローラーの「Ah積算」でどれだけパネルの発電で電流が1日でバッテリーに充電されたか、一覧や日記にして記録しておく「充電貯金簿」をつけることである。
それと、インバーターにワットメーターをつけた「消費電力積算」の値を記録して、Ahに直し
「差額」を見て「充電と消費の収支」を得れば、
 
「いったい自分が使いたい家電の構成で、どれだけのバッテリー容量と、パネルの発電力が必要か」
わかるようになる。
■長時間、消費電力の大きい家電を使うためには
ということで「長時間」あるいは「消費電力の大きい」家電を使うためには「使用する家電の電流消費」を把握して、必要なバッテリーを「増設」「容量アップ」することになる。